No Title Chapter of Lenneth: 03

あれから、特に大きなイベントもなくもう2年が経った。
私も彼もだいぶ此処に馴染んできたというところだろうか。
交戦状態にある国や休戦協定を結んでいない国へ部下を送り込んで軍事拠点の偵察など様々な指示を下してきた。

時折あの人に報告をしながら、私は相変わらず彼の補佐をしていた。
そして分かった。彼には指揮官としての素質があると。
彼の癖まで分かるようになってしまった。
時折不自然な態度をとってみたり、苛立つと左耳のピアスをいじったり、酷い時には口調が少し荒くなるという事。

初対面の時に感じた、人形のような目は時折見せている。
そして、私と似ているんじゃないかという不思議な感情も時折顔を覗かせる。

未だに良く分からない。
こんな職業である事を除けば、至って普通の人だという印象は拭えない。
あの人は、彼が何故に危険なのかを教えてくれない。それなのに、彼は危険だからと言われ、報告するように言われている。訳がわからない。理由が分からなければ危険だとみなす事も出来ない。

私だって、理由さえ分かればこの人が危険かそうじゃないかなんて分かる。

今度、あの人に聞いてみようか。
そしてある時気付いたのだ、私はこの人のことをもっと知りたいのだと。
同時に気づいた、ある感情はよくわからないが。

□□

定期報告をしようと、私はとあるプログラムを開いた。
別にそれを開かなくても、どういうわけか念じればある程度の報告はできるのだが。
回線が開く。画面にはSOUND ONLYの文字が浮かぶ。
定期報告を行う際は、いつも決まって私が先に口を開く。

「今、お時間よろしいでしょうか」
『うん、いいよ。どうぞ』
「前回報告から3か月が経ちました」
『そうだね。もう3か月か』
「月に一度程度体調不良で休暇を取るものの、他は出勤しており勤務態度も良好で、異常な挙動はしておりません。ただ、これまでも申し上げましたように、時折人形のような目をしています。その後は異様に冷めた目をして部下の行動に厳しくなったり、かと思えば異様に寛容というか投げやりになってみたりです」

そう告げた。それが私が見たありのままだ。
今迄も報告していることはあまり変わらない。
なので、どうでもいいような、ちょっと細かいところを観察した報告をしてみたのである。
反応はすぐには戻ってこなかった。何があったのだろう、そう訝っていた。

『…それって、勤務態度に問題ありって言わない?』

はあ、と呆れたような…実際に呆れているのか。
そんなため息が聞こえた。それから、今の言葉である。
それに、私はフォローとして付け加えるべきところを付け加えていなかったことに気が付いた。

「そうですか?先ほど申し上げたのは任務には差し支えない些細な事柄に関する態度なのですが」
『それを言ってよね。他に特筆すべきことはないんでしょ?』
「ええ…」

遅まきながら、フォローしてみた。
あの人は、またも呆れたため息をついた。
どんな仕草をしているのかが容易に頭に浮かぶ。
特筆すべきことは、特にない。それを告げると、あの人は押し黙った。
質問ができるなら、この時ではないだろうか。

「あの、質問をしてもいいでしょうか」
『え、…ああ、どうぞ』
「何故、クロイツァーは危険なのでしょうか」

…遂に、訊いてしまった。
私に尋ねられたあの人は、また押し黙った。
まさか、私にそんな質問をされるとは思っていなかったのだろうか。

『…そう、君も知りたいと思うようになったんだね』
「ええ…」

何故、あの人はこんなにも声に哀愁を漂わせているのだろうか。
いつだって、あの人の感情は分からない。偽りのベアトリーチェである私でさえも。
本物のベアトリーチェになら分かったのだろうか。いや、彼の隠していた本当の感情は知らなかった。
あの人の感情はあの人にしか分からないのだ。いや、あの人でさえも分からないのかもしれない。

『君にも知る権利はあるんだ。これから、このシステムのパスワードを送ろう。それを使って、彼が危険な理由を知るといい』

でも、私はこの人を救うために存在しているのだ。この人の感情を理解できないこの身が、心がもどかしい。
この人は神様。だから、この人を本当に心から救えたら、彼も救えるのだろう。
…あんな人形みたいな目をしなくていいのだろう。

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