No Title Phase:18

Phase:eighteen

作戦開始まで、あと7日。
部下たちには各自いろいろな準備をするように伝えた。

捕縛するだけと言えばそれまでだが、その中であり得るであろう危険に対しての準備だ。
クリストフは執務室のソファに座って一枚の書類を手にしていた。

よく見れば彼の周りにはたくさんの書類が散らばり、床に落ちていた。
Abel Bohun(アベル=ブーン)
Alfonso Mendieta(アルフォンソ=メンディエタ)
Ana-Maria Chartres(アナ=マリア=シャルトル)

Bernard Radford(バーナード=ラドフォード)
Bryan Henryson(ブライアン=ヘンリソン)

Colin Bentley(コリン=ベントリー)
Conrado Ghirardini(コンラード=ギラルディーニ)

Damien Philip(ダミアン=フィリップ)
Dietmar Gegenbaur(ディートマル=ゲーゲンバウアー)

Ethelbert Plant(エセルバート=プラント)

Greta Lloyd(グレタ=ロイド)

Imanol Martin(イマノル=マルティン)

Jeremy Roma Dixon(ジェレミー=ロマ=ディクソン)
Jules Ribot(ジュール=リボー)

Karl Berger(カール=ベリエル)

Lloyd Baldwin(ロイド=ボールドウィン)
Leonard Liddell(レナード=リデル)

Magali Renouvier(マガリ=ルヌヴィエ)
Matheus Erwin Ruhnken(マテウス=エルヴィン=ルーンケン)
Maurice Baudelaire(モーリス=ボードレール)

Philander Percy(フィランダー=パーシー)

Raul Ibarruri(ラウル=イバルリ)
Robert Ehrsson(ロベルト=エールション)
Rodolpho Modigliani(ロドルフォ=モディリアーニ)
Roland Brenan(ローランド=ブレナン)

Sergi Japon(セルジ=ハポン)
Sergio Carnicer(セルヒオ=カルニセル)

Valentino Croce(ヴァレンティーノ=クローチェ)
Viktoria Bunina(ヴィクトーリヤ=ブーニナ)

Williams Maynard(ウィリアムズ=メイナード)
Winfried Gerhardt(ヴィンフリート=ゲルハルト)
以上が元帥に楯つこうとしている首謀者たちということらしい。
足元に散らばっているのは、彼ら個人のデータおよびスケジュール。

このリストは彼自身が別に調べたものとは違っていた。
このリストには、たった1人だけ名前がない者がいるのだ。
Duke Arze Lautrec(デューク=アルゼ=ロートレック)という名が。
おまけと言ってはおかしいと思うのだが、その人物の個人情報は軍のデータベースに登録されていない。即ち彼は軍人ではない。
もしかして、と考えがよぎる。
自分たちと同じ境遇の人間か?
ならばこうしてはいられない。
意を決して、ソファから立ち上がった。
足元に散乱していた書類を何とかまとめて、執務机の鍵が掛けられるところにしまう。
こんな物、見られては困る。
そして、しまい忘れた書類がないか確認して足早に執務室を出て行った。
ただ1枚の書類を握りつぶしたままで。
□□
所変わって、ニューヨーク市内の高級なフレンチレストランにて。
彼は先程(と言っても10時間位前の話だが)、電話の相手と会う約束を取り付けていた。

ようやく待ち人がやってきたようだ。
左目しか視力が無い為に視界は狭いが、それでも待ち人が近づいてきているのは分かる。
短めの黒い髪を靡かせてこちらへ向かってきた客人に彼は立ち上がって手招きをする。
黒髪の待ち人は彼に軽く頭を垂れて、挨拶をして口を開いた。
「失礼します。随分とお待たせしたようですね?」
「いや、私もさっき来たばかりだ…君も態々本拠地のベルリンから来てくれたことだしな。早速食事でもしながら話をしようじゃないか」
「ええ、そうですね。……お恥ずかしい話ですが正直に言いますとね、私は空腹でして」
待ち人の正直な告白に彼は笑いを堪え切れなくてくつくつと笑った。
そして、笑いながらも客人に自分の向かい側の席に座るように勧める。
客人はそれに従って、指定された席に着いた。
「ははは…それならよかった。すでに人払いはしてある。人目は気にせずに食べたまえ」
「それではお言葉に甘えさせていただきましょうか」
客人の手がアペリティフのグラスを取ろうとしたその時、携帯電話の電子音が鳴った。
彼は自分のものかとやや焦ってスーツのポケットの中を探って自分の黒い携帯電話を取り出したが、彼のものではないらしい。
そうしていたのは客人も同じだったようで、彼のミッドナイトブルーの携帯電話のディスプレイを見た瞬間。
その一瞬だけ客人の顔が凍りついた。客人は慌てて表情を繕い、言葉を発した。
「申し訳ございません。少々席を外させていただきますがよろしいですか?」
「ああ、構わんよ」
彼がそう言ったその途端、客人は席を外してどこかへと駆けて行った。
恐らくレストランのトイレか外だろうと考えた彼はぼんやりと窓の外を見つめた。
「お待たせして申し訳ございません」
客人は通話しながらも慌ててレストランの外に出てきた。
先程一瞬だけ見せた凍りついたような表情をしていたが、口元だけはかすかに笑っている。
「はい………はい…いえ………はい。無事に接触できました」
口角が次第に上にあがっていく。
これこそが自分の戦略だ。
「ええ、分かっていますよ。………この世界のために」
自分は頭の中のリストに載っていることをするだけ。
いかにも自由に行動しているように見える全てが偽りだ。

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